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      SHONAN TAX OFFICE NO.356  
 




 

 
令和元年6月1日
 
配偶者居住権の相続税の対応
 
 

 5月から各地で記録的な猛暑になりました。特に北海道は涼しいというイメージを一新し、気温が39度を超えました。今年の夏はどうでしょうか。

 

 昨年の7月は、記録的な猛暑になりましたが、今年の夏の予報は、気温は平年並みで、晴れの日は少ないそうです。また、極端な高温傾向とはならないそうです。予報が当たると良いのですが。

 

 さて、5月中に沖縄、奄美と九州南部が梅雨入りしました。平年より若干遅く、昨年よりは早くなっています。この調子ですと、関東地方の梅雨入りも6月の2日の週か、その翌週早々には梅雨入りしそうで、その後7月半ばまで梅雨空が続きます。

 

 先月(2019年5月)、国税庁は、平成30年分の「所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を公表しました。

 

 所得税等の申告は2,200万人(対前年比+1.1%)で、そのうち土地等の譲渡所得の申告は53万人(同 +2.3%)。株式の譲与所得の申告は、その倍の102万人(同▲1.6%)だったそうです。株式の譲渡所得金額は3兆円(同▲10.6%)で、前年比で1割も下がりました。株式市場は冷えているのかも知れません。

 

 この申告者の2,200万人中、所得区分では、最も多いのが給与所得

47%。雑所得26%で事業所得は、17%です。

 

 最も多い給与所得者の6割近くが還付申告です。所得税の納税者数は、源泉徴収だけで申告をされない方もいますので、倍以上の5,300万人で、我が国人口の半分近くの方が所得税を納めています。ちなみに我が国で所得税が創設された明治20年の納税者数は12万人でした。

 

 個人事業者の消費税申告件数は、 114万件(同▲0.3%)で、件数は若干減少傾向にありますが納税額は横ばいの6千億円程度でした。

 

 贈与税は、49万人(同▲2.5%)で、そのうち申告納税額がある方は36万人(同▲2.5%)で、申告人員は減少しましたが、申告納税額は前年比34%増で3千億円近くになっています。

 

 一方、贈与税で相続時精算課税を適用した方は、4万人で納税額300億円と減少傾向にあります。この贈与は相続時に納税等、影響が後で現れますので、どうしても今贈与が必要な場合など特殊な場合以外はあまり勧めていません。

 

6月の税務・総務予定
 

(税務)
*所得税等の予定納税の納税通知  17日(月)まで

                                   (減額申請は、7月15日まで)


*個人住民税(普通徴収)の納付(第1期分) 条例で定める日

 

(総務他)
*給与計算 住民税額の変更
 

*平成31年度の労働保険の更新手続き

 6月3日(月)から7月10日(水)まで
 

*クールビズ等節電対応    5月1日〜9月30日まで (環境省)
 

 

 平成31年度の税制改正では、相続法の改正(平成30年7月6日公布)に伴った対応がされました。

 

 相続法の改正の中で配偶者居住権が新たに認められることになりましたが、相続税はこれによってどのように影響するのかは興味深いところです。

 

 相続法の改正の関係は、以前にも取りあげましたが、ここで再度確認しておきます。

 

 遺言書の方式緩和・・平成31(2019)年1月13日から

 

 配偶者の居住の権利・・令和2(2020)年4月1日から

 その他遺留分や特別の寄与など・・令和元(2019)年7月1日から

 

 なお、遺言書の法務局での保管は(平成30年7月13日公布)・・令和2(2020)年7月10日から

 

それぞれ施行され、あるいはされています。

 

配偶者居住権の相続税の対応

 

 配偶者居住権の施行は、1年後の来年の7月からですが、どのように影響するのかは考えておかなければなりません。遺産分割や遺言書で配偶者居住権を設定したときにどうなるのか。あるいは設定すべきなのかも含め前もって考えておかなければなりません。まず、具体的にどうなるかを計算してみます。

 
(設例)マンション(築15年,鉄筋コンクリート造,耐用年数47年、固定資産税評価額1,400万円)を対象として終身期間の長期居住権を設定した場合(配偶者(女性)の年齢:60歳)で土地の相続税評価額1,000万円のとき、相続税の申告では、どのように計算するでしょうか。
 

 この設例の場合のそれぞれ数字を出しておきます。

 

   居住権の存続年数=女性60歳・余命年数=28.97

 

   複利現価率 28.97年⇒29年⇒0.424 

 

@ 建物所有権

 

建物の相続税評価額 ×

 

法定耐用年数(1.5倍)−築年数−居住権の存続年数

  法定耐用年数(1.5倍)− 築年数

 

 × 残存年数に応じた 複利現価率 =

 

 14,000,000円 ×(47×1.5−15−28.97)/ (47×1.5−15)× 0.424 =

 

 14,000,000円 × 26.53 / 55.5 ×0.424 = 2,837,514円

 

A 配偶者居住権(建物)

 

 建物の相続税評価額 − @ =  14,000,000円− 2,837,514 =11,162,486円

 

B 土地の所有権

 

 土地の相続税評価額 × 残存年数に応じた複利現価率 =

 

 10,000,000円 ×0.424 =4.240,000円

 

C 配偶者居住権(敷地)

 

 土地の相続税評価額 − B =10,000,000円−4.240,000円=5,760,000円

 

 となり、配偶者居住権が付いた不動産の所有者は、配偶者の半分にも満たないことになります。

 

 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 居住用建物を同居以外の親族が取得して小規模宅地の減額が使えない時に、配偶者に配偶者居住権を付けるとこの配偶者には特定居住用宅地等の減額が認められますので、相続税額はかなり減少します。かつ土地の部分は次の相続で大きく影響します。

 

 設例ではマンションなので建物評価額が大きくなっていますが、通常の木造一戸建てでは土地に比べてかなり少なくなるのが一般的で、土地の評価額の方が大きくなるのはざらですので影響はより大きくなります。

 

 次に相続開始時の配偶者の年齢による相続評価額の計算の元になる数字を出しておきます(現時点のものですが、それ程大きく変わることはないでしょう。)。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 相続税額に影響する敷地の評価は、相続開始時に、配偶者が80歳・女性だったとしますと、複利現価率は0.701ですので、土地の相続税評価額の7割が所有者で、配偶者は3割になります。

 

 一方、被相続人が死亡したとき、その配偶者が女性で30歳であったとしますと、配偶者居住権を設定すると敷地の8割以上が配偶者となり敷地を相続で取得した相続人は2割にも満たないことになります。かつ前記のように配偶者は無条件で居住用部分については特定居住用宅地として小規模宅地等の評価減も受けられ、かつ所有者も一定の要件が満たされれば適用があるかも知れません。配偶者居住権には財産的な価値がないためその配偶者の(二次)相続の時には、相続財産とはなりませんので、あらゆる場合を考慮して配偶者居住権の設定の選択肢を用意しておく必要があります。

 

 確かに、遺産分割の場では納税額のみで行われる訳ではありませんが、二次相続の相続税額も考慮した分割も視野に入れざるを得ないことから、節税効果を考えれば困難な判断が求められます。今後この取扱いについては、果たして課税の公平を保たれるのかは問題となるかも知れません。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 ちなみに、配偶者居住権が5割なるのは、配偶者が女性では年齢が60歳で、男性では65歳となります。

 
 省略
 
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(http://www.shonantax.jp/)

 

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消費税が変わる−3
 

 今月も軽減税率制度に関するQ&Aからです。

 

Q 当社では、食用の生きた魚を販売していますが、軽減税率の適用対象となりますか。

 

A 「食品」とは、人の飲用又は食用に供されるもの をいいます ので、人の飲用又は食用に供される活魚は「食品」に該当し、その販売は軽減税率の適用対象となります。

 

 なお、生きた魚であっても人の飲用又は食用に供されるものではない熱帯魚などの観賞用の魚は、「食品」に該当せず、その販売は軽減税率の適用対象となりません。

 

 なかなか難しく、逆に飲食が可能なものであっても「食品」に該当しないものとしては、

 *工業用原材料として取引される塩

 *観賞用・栽培用として取引される植物及びその種子などです。

 

 一方、人の飲用又は食用に供されるものとして譲渡した食品が,購入者により他の用途に供されたとしても,「飲食料品の譲渡」に該当しますので、何に使うかまで考慮する必要はありません。(当然!)

 

Q 家畜の 飼料やペットフードの販売は、軽減税率の適用対象となりますか。

 

A 人の飲用又は食用に供されるものではない牛や豚等の家畜の飼料やペットフードは、「食品」に該当せず、その販売は軽減税率の適用対象となりません。

 

Q 賞味期限切れの食品を廃棄するために譲渡する場合は、軽減税率の適用対象となりますか。

 

A 賞味期限切れの「食品」を廃棄するために譲渡する場合は、人の飲用又は食用に供されるものとして譲渡されるものではないことから、軽減税率の適用対象となりません。

 

Q 特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品美容食品などの販売は、れぞれ 軽減税率の適用対象となりますか。

 

A 人の飲用又は食用に供される特定保健用食品、栄養機能食品は、医薬品等に該当しませんので、「食品」に該当し、また、人の飲用又は食用に供されるいわゆる健康食品、美容食品も、医薬品等に該当しないものであれば、「食品」に該当しますので、それらの販売は軽減税率の適用対象となります。

 

 省略

 


編集後記 先月5月は、法人数の最も多い3月決算法人の通常の申告期限でした。今月は今度は総会シーズン。NPO法人や公益法人に多いようです。なお上場企業の株主総会の集中日は、今年は6月27日(木)だそうです。またこの通信が皆様のお手元に届く頃に関東地方は梅雨入りに入るかも知れません。熱中症や食中毒にお気をつけ下さい。
          編集発行 株式会社プランニングファイブ