P5 NEWS     

SHONAN TAX OFFICE NO.347  
 




 

 
平成30年9月1日
 
特別の寄与
 

 8月は、高温に集中豪雨、洪水、氾濫に崖崩れなど多くの災害が発生しました。特に四国、中国地方の西日本に被害が集中し、北陸へと広がっています。

 

 また、8月の台風の発生件数も近年に比べて多く、カップルで北上する台風もあり毎週のように台風情報が氾濫しました。

 

 台風の発生件数です。

 


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30 1 1 1 0 0 4 5 9         21
29 0 0 0 1 0 1 8 5 4 3 3 2 27
28 0 0 0 0 0 0 4 7 7 4 3 1 26
27 1 1 2 1 2 2 3 4 5 4 1 1 27
26 2 1 0 2 0 2 5 1 5 2 1 2 23
       

気象庁HP

 

 災害に関連し、各市町村では災害時の避難に関する情報をホームページなどで公開しています。

 

 その内容から・・地震時の大規模火災や水害時(洪水・崖崩れ)など、人命に危険が及ぶ恐れがあるときに市町村では、避難に関する情報を防災行政用無線の屋外スピーカーや防災ラジオなどで伝えています。屋外スピーカーによる通知は、確かに聞き取りにくいのですが、いち早く伝わります。こちらでは、『テレビ神奈川』などのローカル局の「d」ボタンを押してサービスを利用することができます。

 

 なお、避難に関する情報は「避難準備・高齢者等避難開始」「避難勧告」「避難指示(緊急)」があります。

 

 「避難準備・高齢者等避難開始」は、避難勧告や避難指示(緊急)を発令することが予測される場合に発信されます。高齢者や体の不自由な方などには避難を開始してもらい、それ以外の方は、避難の準備をしてもらいます。

 

 「避難勧告」は、災害による被害が予想され、人的被害が発生する可能性が高まった場合に発信され、避難場所や安全な場所に速やかに避難をすることを求めています。

 

 「避難指示(緊急)」は、最終的な段階で、災害が発生するなど状況がさらに悪化し、人的被害の危険性が非常に高まった場にに出されます。かなり危険な状態が差し迫っていますので、直ちに避難場所に避難するか、避難場所への移動で危険が及ぶなど困難な場合には、そこの場所のより安全な所に避難を実行する段階です。

 

9月の税務・総務予定
(税務)
*個人消費税の振替納税(中間が必要な方)
 (中間1回の方)    27日(木)
(総務他)
*防災訓練
*社会保険、標準報酬月額(定時決定)  の改定に伴う給与ソフトの対応

 
 

 今月も、先月号でお知らせしましたが、平成30年 7月13日に公布(法律72号)された「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」についてのお話しです。

 

 その中の一つに配偶者に対する権利の強化として、配偶者居住権が新設されました。

 

 これは、平成25年9月に最高裁判所が、非嫡出子(婚外子)の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条四号のただし書きに初めて違憲判断を示した最高裁判所の大法廷の決定をうけて、平成25年にその部分の民法が直ちに改正されました(法律94号)。本来、配偶者の権利を含め立法化すべきものでしたが、立法化が進まず、この決定でこの部分のみの改正が行われていました。

 

 余談になりますが、最高裁判所の非嫡出子の差別に対する判断は、平成7年大法廷決定以来、結論としてはこの規定を合憲としましたが、その平成7年の決定でも既に、嫡出でない子の立場を重視すべきであるとして5名の裁判官が反対意見を述べています。

 

 今回の民法改正では、配偶者の相続分(相続人が配偶者と子供の場合に、配偶者を1/2とするもの)を増やそうとする方向も示されていましたが、本改正ではこれは行われませんでした。

 

 その理由は・・

 

「配偶者の相続分の引上げにつきましては、昭和五十五年の民法改正においてこれを引き上げたという経緯もありまして、これ以上引き上げることに対しては、法制審議会においても多くの異論や問題点の指摘がございました。特に、高齢者同士の再婚がふえていること等に照らすと、仮に配偶者の相続分を引き上げるとしてもこれを一律に引き上げるのは相当でなく、被相続人の財産の維持又は増加に対する貢献が大きい場合に限定する必要があるのではないか、しかしながら、そういった配偶者の貢献の程度を実質的に考慮しようとすると相続をめぐる紛争が過度に複雑化、長期化するとの強い懸念が示されました。
 他方で、配偶者の貢献の程度をある程度形式的に判断するために婚姻期間などによって相続分を変えるという考え方に対しましては、婚姻関係が実質的に破綻している場合にも、長期間これが継続しているときには配偶者の相続分が引き上げられることになって相当ではないという指摘等もされたところでございます。」
衆議院法務委員会第19号平成30年6月8日審議録
 

 また、大きな改正の一つに「特別の寄与」制度があります。

 

 これは、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者。相続人や相続の放棄をした者は除かれます。すなわち相続人以外の親族です。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができる(民法1050条@)とするものです。

 本改正では、被相続人であるお父様の息子さんの奥様がお父様の介護を一生懸命にされていても、その奥様には特別の寄与に報いることができませんでしたが、この制度でそれに報いることにしました。当初は、この「特別の寄与」の制度は、親族に限定すべきではないとした意見が少なくありませんでしたが、最終的には、被相続人の“親族”に限定されました。

 

 これは、特別の寄与の制度を新設することについて、法制審議会における調査審議の過程において、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念する指摘がされていました。そのような事態をできる限り防止するためには、請求権者の範囲を限定する必要が高いとして親族に限定しましたが、これでも今後難しい事例が出てくるような気がします。

 

 今までになかったこの特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、できません(民法1050条A)。

 

 この請求があると家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定めることになっています(民法1050条B)。

 

 なお、相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に当該相続人の法定相続分(相続分の指定がある場合は指定相続分)を乗じた額を負担することになります(民法1050条D)。

 これについては、相続人の親族に親の介護を無償で行うことを強いることにならないか、特別の寄与では、特別と特別でない寄与をどのように分けるのかなど、今後、実際に動き出せば難しい問題もあります。

 

 また税法についても、まだ明確にされていません。

 


「田島政府参考人・・ 特別寄与者が相続人に支払いを請求する特別寄与料に係る税法上の取扱いについてでございます。
 相続に伴ういろいろなケースについての現行法における取扱い、例えば、相続人が特別の寄与に応じて遺産分割を受けた場合の取扱いですとか、特別の寄与を行った方に対して遺贈する場合の取扱い、また、相続後に相続人から特別の寄与を行った方に贈与する場合の取扱いなどを参考としつつ、検討する必要があると考えてございます。
 いずれにいたしましても、御指摘の点を踏まえまして、今般の民法改正法案が成立した場合の税制面での対応につきましては、今後、与党の税制調査会で御議論いただき、その結果を踏まえて必要な措置を講じてまいりたいと考えてございます。」

衆議院法務委員会第21号平成30年6月15日審議録
 

 
 省略
 

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成人年齢の引下げ
 

 6月号で取りあげました成人年齢の引下げの改正民法は、本年6月13日に国会で成立し、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりました(平成34(2022)年4月1日施行)。

 

 これに伴い、税制でどのように対応するか今後煮詰めていくようです。

 

 政府与党の「平成30年度税制改正大綱」(H29.12.14)でも、検討事項に、「税制上の年齢要件については、対象者の行為能力や管理能力に着目して設けられていることであることから、民法に合わせて要件を18歳に引き下げる事を基本として、法律案の内容を踏まえ実務的な観点から検討を行い、結論を得る。」とされていました。

 

 このため平成31(2019)年度税制改正でこれに伴う改正が行われるといわれています。

 

 特に相続税・贈与税に、「20歳」いう年齢要件を設けている制度は多く、例えば、『未成年者控除』(相法19条の3・「二十歳に達するまでの年数」)、『相続時精算課税』(同21条の9・「直系卑属である者のうちその年1月1日において二十歳以上であるものに限る。」)、『住宅取得等資金贈与の特例』(措置法70条の2・「贈与を受けた日の属する年の1月1日において二十歳以上であつて」)、『教育資金の贈与の特例』(措置法70条の2の2)、『結婚・子育て資金贈与の特例』(措置法70条の2の3)、『直系尊属からの贈与の特例』(措置法70条の2の5)、『事業承継税制』(措置法70条の7他・「贈与の日において二十歳以上であること。」)、所得税でも『(ジュニア)NISA』(措置法9条の9、同37条の14の2他)などがあります。

 

 この中には民法の施行前に期限のくるものもありますので、一度に改正されないかも知れません。

 

 また相続税の『未成年者控除』は、控除額の減少につながることから増税になりますので議論となるところでしょう。

 

 他にも、年齢を規定しているもののなかで影響を受けそうなところでは、『控除対象扶養親族』(16歳以上)、『特定扶養親族』(19歳以上23歳未満)があります。特に特定扶養親族は現行の成人年齢を跨ぐ形で規定されています。果たしてどうなるか興味深いところです。

 

 省略

 


編集後記 夏休みを終わりましたが、厳しい残暑に台風と、いい加減うんざりします。今年も春が短かったように、夏が長く秋が短いかも知れません。一方で9月は仕事の集中する時期でもあります。例年でも、税務職員の7月の異動後の秋から、税務調査が本番になります。事務所でもできうる限り早急に対応させて頂いております。
           編集発行 株式会社プランニングファイブ