P5 NEWS     

SHONAN TAX OFFICE NO. 270   
 




 

 
平成24年4月1日
 
今そこにある危機
 

 こちらでも開花から1週間ほどで見頃になる(ソメイヨシノ)が,蕾を付け始めました。神奈川県の桜の名所もいろいろありますが,小田原城址公園のさくらは,350本。まだ,つぼみから少し開花しだした程度だそうです。昨年の満開は4月11日頃ですので,見頃はあと一週間はかかりそうです。

 桜が散ると,5月の末にもすぐに梅雨入り。そして梅雨が終わると夏の猛暑が始まり,切迫した電力供給の問題が待っています。

 原発災害をおこした電力供給先の東京電力は,今月1日から企業や地方自治体など大口需要家(自由化部門・個別契約?)向けの電気料金を平均17%値上げすると通告しましたが,一般の国民はどうも釈然としない思いを持っているのではないでしょうか。昨年9月の原子力賠償支援機構の発足によって東電は,会社更生法を適用とした日航のような法的整理の道はなくなったと言われています。

 もちろん法的整理をして債務の切り捨てができたとしても,賠償費用,除染費用や廃炉費用は切り捨てることはできません。国民感情とすれば,経営者の首のつげ換えだけで会社組織はそのままで,値上げと原発の再稼働の受け容れはとてもできない話しで結局解決を先送りして何も変わらずに次の世代にツケを回すことになりそうです。

 また厳しい問題として,国の財政は45兆円の収入(税収・その他収入)で毎年20兆円の借金を返済して新たに45兆円の借金を繰り返している現状があります。深刻な財政状況はここ20年で急激に増えましたが,ここまで巨額の債務を発生させた反省をどこからも聞かれないのは不思議な話です。

 一般に住宅借入れなどで借金ができるのは,多くて年収の4-5倍。国は20倍です。行き着くところは,ギリシャのように借金を踏み倒すか,財産税を含め増税をするか,通貨を大量に供給して国民生活を破綻させるかしか方法は無いといわれています。

         財務省HP

 


4月の税務・総務予定


(税務)
*申告所得税口座振替日20日(金)
*個人消費税口座振替日25日(水)
 

(総務他)
*4月の給与の支払時から健康保険料の料率の改訂 神奈川県9.49%⇒9.98%            (ドヒャー)
 

 

24年度税制改正法成立

 

1月27日に国会に提出された平成24年度税制改正法案の「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」等は,3月8日衆議院を通過,3月30日に参議院で可決成立し3月31日法律第16号として公布されました。

 今回の改正は,平成23年度改正における積み残し改正で、昨年に何度もお話しした内容で注目すべき改正は少ないようです。

 次に,財務大臣による改正の提案理由を紹介しておきます。

 

○安住国務大臣 ・・この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 

 第一に、個人所得課税について、認定低炭素住宅の新築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度の創設給与所得控除の上限設定、勤続年数五年以内の法人役員等の退職所得課税の見直し等を行うこととしております。
 

 第二に、法人課税について、環境関連投資促進税制の太陽光発電設備及び風力発電設備に係る即時償却制度の創設、中小企業投資促進税制の拡充等を行うこととしております。
 

 第三に、資産課税について、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の拡充、延長等を行うこととしております。
 

 第四に、消費課税について、自動車重量税に係る税率の見直し及び環境性能にすぐれた自動車に対する軽減措置の拡充、延長地球温暖化対策のための課税の特例の創設等を行うこととしております。
 

 第五に、国際課税について、国税に係る徴収及び送達の共助に係る国内法の整備、国外財産調書制度の創設等を行うこととしております。
 

 その他、試験研究費に係る税額控除制度における試験研究費が増加した場合の特例の適用期限を延長するなど、適用期限の到来する特別措置の延長、既存の特別措置の整理合理化等の所要の措置を講ずることとしております。(衆議院財務金融委員会平成24年2月29日議事録)

 

 

これといったことは述べていませんが,この中で興味深いのは,国外財産調書制度の創設等です。

 この制度は,国外財産調書法(「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に係る法律」平成9年法110号)の改正で,居住者は,毎年12月31日において合計価額5,000万円超の国外財産を有する場合,財産の種類,数量,価額等を記載した調書を3月15日までに提出することが義務付けられます(同法5条)。平成25年12月31日時点の国外財産から,調書に記載して提出することになります。

 ユニークなのは,「その財産に関して(所得税や相続税などの申告で)申告漏れがあっても、加算税を5%、後でわかっても減額する。しかし、調書の提出がない場合とか記載に誤りがあるという場合に申告漏れが生じたときには、加算税を逆に5%加重するという一種のペナルティーを科すということになっておりますし、さらに重大な、故意の調書の不提出や虚偽記載ということがはっきりすれば、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という大変重い罰則を付して、適正な提出に向けたインセンティブとすることにしております。」とされています(衆議院財務金融委員会平成24年3月6日議事録・五十嵐副大臣答弁)。すなわち懲役刑が新たに設けられ(同法10条),この税務調査についても権限が強化されました(同法7条)。国外財産をお持ちの方は,来年末から必ず教えてください。

 これは,穿った見方かも知れませんが,資産家は国家の財政破綻の対策として,通貨分散し国外に資産を移転することを考えていると。そのために前もって把握しようとしているのかも知れません。

 

 
消費税増税法案の国会提出

 

 社会保障と税の一体改革の一環として3月30日に消費税率の引き上げを柱とする消費税増税法案(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案)が,閣議決定され国会に提出されました。忙しい!!

 消費税法の改正は,

(1) 平成26年4月1日施行(第2条)

 ○消費税率を4%から6.3%に引上げ(地方消費税1.7%と合わせて8%)。

 ○消費税の使途の明確化

 これは,消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする,とされています。国会の審議でも議論されていましたが,元々不足していた分の穴埋めに使うのですから使途を明らかにしてもあまり意味がありません。これまで一般会計で賄われていた社会保障の財源の一部が消費税増税で置きかわるだけですので,こんな理由は無くても良い話ですが。

 ○課税の適正化(事業者免税点制度の見直し、中間申告制度の見直し)

  これは従来資本金1,000万円未満の新設法人には納税義務が免除されていましたが,設立された法人を支配している会社の課税売上高が5億円を超える場合には、納税義務を免除しないというものです。消費税額の少ない(直前1年間の確定消費税額が48万円以下)事業者は中間申告義務は無かったのですが,届け出をすれば中間申告をしても良いよという規定です。そのような要望があったのか意味するところは明らかにされていません。

 

省略

 
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税理士制度−24(完)
 

 この話,24回も続けてきました。そろそろまとめることにして,今回でシリーズ最終回といたします。長い間有り難うございました。

 このシリーズのコンセプトは,税理士制度は必要かどうかを考えることでした。我が国は,明治維新後2回の(財政)破綻を経験していると言われています。その引き金の多くは戦争でした。また資源の無さも追い打ちを掛けたのも確かでしょう。

 財政破綻の方程式は,財政支出>国民の貯蓄からの国債購入+税収 だと言われています(一部端折っていますが)。すなわち税収が要になることは,昔も今も変わりません。貧しい日本は安定した税収がどうしても必要でした。その中で今の“税理士制度”とういう諸外国にもあまり無い制度ができ上がりました。

 今,国は国家公務員給与の2割削減を打ち出しています。すなわち人員の削減・行政の縮小です。税務行政も例外ではありません。それを担うのは,租税環境の整備(租税教育や関連団体による協力)であり,また税理士制度の充実だと思っています。

 それならば,税理士は行政の出先機関という位置づけかと思われるかも知れませんが,制度は国民から信頼されるものでなければ成り立ちません。年金制度をみてください。資源でもあれば別ですが,租税制度(課税も徴収も)が国民から信頼されなくなったら国は成り立ちません。

 それはそれとして税理士が出先機関であるならばこの制度は必要ないことになります。このシリーズの8回目(H22/9・No.252)で,制度の趣旨が「税務官庁のつごうばかり聞くというのではなく、むしろ納税者の正当な利益と権利を納税者にかわって擁護する」制度であるとした国会答弁を紹介しました。目的は同じでも緊張した関係は必要です。それが租税制度に対する国民の信頼に結びつきます。

 ギリシャ危機の理由の一つに税に対する意識の低さが指摘され,EU域内で危機が表面化しているところの多くに共通しています。また前月号で紹介しましたが,節税スキームの盛んな米国でも登録税務申告書作成者制度が昨年できるなど,世の中変わってきていると感じています。

 税理士制度の必要性については,最終的には歴史が判断することになるでしょうが,いずれにしても今の税理士制度は,もちろんこのままで良いという訳ではありません。

 

省略

 


編集後記

  今月から健康保険の料率が上がるため,給与から差し引かれる社会保険料はかなり多くなります。神奈川県の場合月収20万の人は500円,40万円の人は1,000円も多く差し引かれます。ビックリしないでください。さて,今月から新年度。あちこちに花が咲きほこり昼間はかなり暖かくなりました。やっと重たいコートを脱げます。

            編集発行 株式会社プランニングファイブ