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税理士中江博行事務所  NO.118

 




 

 
平成11年7月1日
オンブズマン
 
 最近では,“オンブズマン”と言う言葉もよく使われるようになりました。 今月はこの“オンブズマン制度”についてです。オンブズマン制度を簡単に言いますと,行政に対する国民の苦情申立の救済制度のようなものです。 この制度の法的な裏付けは,地方自治体における情報公開条例によっています。これにより自治体の情報公開を求め行政の監視をしようと言う目的で各地に市民オンブズマンが活動しています。自治体の行政活動に不正の疑いが有れば,市民オンブズマンは,行政の保有する資料の開示を求め,監査請求や提訴を行います。
 その中で,新潟市民オンブズマンは一昨年大阪で開かれた「全国都道府県議会議員軟式野球大会」に参加した議員29人のために,県が支給した254万円の旅費などを県に返還するように求めて,提訴しました。この訴訟で新潟地方裁判所は,住民側の請求を全面的に退ける判決をいい渡しました。
 判決の示すところは,野球大会への参加は公的な面を持ち,単なる私的なレクリェーションではないこと,他議会の議員らとの交流は地方公共団体の連携・協力にとって意味があるとして,議員を野球大会に派遣することを決めた議会の決定に裁量権の逸脱はないとしたものでした。
 しかし実態は,他の県議との交流の場は実質開会式と試合だけであったようで,証人として出廷した県議は,議員との交流は全く付随的なものであったと証言しています。この野球大会は,私的な性格を持つレクレーション的色彩の強いものだったようです。その後は,野球大会は中止されているようですが,「野球という『遊び』への参加に税金を使うことを躊躇なく認めた今回の司法判断は,大会を自粛した議員の感覚よりも,もっと時代から遅れているのかもしれない。」とした記事もありました(ジュリスト1159.5)。
 最近やっと,国に対する情報公開法が成立しました。現実の裁判制度をみても,実効を挙げるまでには長い道のりが有るでしょうが,やっと少し前進しました。
 
 

7月の税務・総務予定
(税務)
*所得税の予定納税額の納付  月末(8月2日)
*固定資産税の2期分  通常月末(8月2日)
(総務)
*社会保険の算定基礎届作成準備
 
 再度“パソコン減税”のお話をさせていただきます。
 パソコン減税の導入から3ヶ月が経過しましたが,当初は,法人の需要を喚起する起爆剤として期待されていましたが,思ったほどの効果は上がっていないようです。
 効果の上がらない理由は,企業業績の低迷が長引き減税効果が期待できないこと,利用期限が来年3月まででまだ余裕があること,そして,制度が意外と分かり難いことなどが考えられます。 そこで,少しでも理解を深めていただくために,少し説明させて貰います。

Q.「パソコン減税」について簡単に説明してください。

A.「パソコン減税」は,青色申告をしている法人や個人事業者が、100万円未満のパソコンなどの情報通信機器を購入した場合に,即時償却(購入価額の全額が費用(損金)になります)ができるという制度です。
 利益の出ている企業にとっては、効果が期待できます。

Q.私は数棟のアパートを所有しています。この機会に事務の効率化を図るためパソコンを50万円で 購入しようと思っております。 この制度が使えますか。

A.この制度は使えません。
 個人にかかる「パソコン減税」は、租税特別措置法12条の4(特定情報通信機器の即時償却)で規定されています。少し難しくなって恐縮ですが,この規定は,「・・・当該個人の事業の用(貸付けの用を除く。)に供した場合には、その用に供した日の属する年における当該個人の事業所得の金額の計算上・・・必要経費として計算した金額とする。・・・」とされています。
 すなわち事業所得以外での必要経費算入を認めていません。現行の取扱いでは、不動産等の貸し付けによる所得は「不動産所得」として区分されています。アパート経営の場合は、貸室がどれだけあろうともその貸付による所得は「不動産所得」となってしまいます。ただし、下宿等のように食事を供する場合には、事業所得等と扱えることとされています(所基通26−4)。

Q.購入価額に制限はありますか。

A.この制度の対象となる特定情報通新機器の取得価額は,1台又は1基ごとに100万円未満でなければなりません。
 そしてこの機器に取り付ける付属装置がある場合には,本体装置とその付属装置の取得価額の合計額が100万円未満であれば,付属装置も含めて全額,一度に償却することができます。

Q.中古のパソコンを購入しましたが,この制度の適用は受けられますか。

A.この制度の対象となる特定情報通信機器は,新品または新古品(型落ち品、店頭展示品など。)で中古品には適用はありません。

Q.パソコン(40万円)の購入とソフトウェア(50万円)を同時に購入しました。全体では90万円で,100万円未満となります ので一括償却が出来ますか。

A.ソフトウェアは、プリインストールされているものを除いて対象外です。 このためパソコンについてはこの制度を適用して一括償却しますが,ソフトウェアについては,繰延資産として5年で償却します。なお,あなたが個々のパーツを揃えてパソコンを組み立てた場合には,Windows98の様にパソコンを動かすために必要なOSについてはそのパソコンに含めて一括償却することができます。

Q.パソコンを購入しましたが,まだ試運転中で事業年度中には実際の稼働は出来ませんでした。この場合にこの制度の適用はありますか。

A.この制度は,イ.電子計算機その他の情報通信に関する機器で大蔵省令で定める器具及び備品を,ロ.その製作の後事業の用に供されたことのないものの取得(または製作)して、これを当該法人の事業の用(貸付の用を除きます)に供した場合に適用があります。つまり,実際に稼動した状態にあることが必要で、試運転中・運用テスト中といった状態ではこの制度は受けられません。
 

Q.付属装置についてもこの制度が適用できるそうですが,その範囲を教えてください。

A.付属装置の範囲については難しい問題ですが,購入の時期については,その付属装置は,本体装置と同時に設置される場合に限り適用があるとされています。「同時に設置」とは,ある一つの目的のために購入した本体装置を設置してから相当期間内に,その目的のための付属装置を設置する必要がありますが,同時でなくても構いません。なお,相当期間内にあるかどうかは,それぞれ個別的な事情に応じて具体的に判断することになりますが,少なくとも,本体装置と付属装置との設置計画が有機的に結びつけられていることを前提として,その装置のために要する期間として通常妥当な期間であるとされています。なんだか良く判らないと思いますが,機器によっては,注文してすぐに手に入るものばかりではありませんので,それらの期間を考えれば,通常1ヶ月以内ぐらいと言うところでしょうか。



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 今年の路線価
 
 平成11年分の路線価図等は8月4日に全国の国税局・税務署で公表されます。例年の公表時期は8月中旬でしたので,少し早くなりました。
 各税務署には、その国税局管内の路線価図等が設置されますが,各国税局と一部の税務署には全国分の路線価図が設置されます。全国の路線価図と等が置かれている税務署は,神奈川県では,横浜中,神奈川,藤沢などです。
 また,今年度の税政改正よって今年4月以後開始する事業年度からは、法人税の実効税率が約5%引下げられました。そのため、平成10年度の事業年度を切り上げて、11年度を早めにスタートさせるように、事業年度を検討する会社が増えています。
 たとえば、2月決算法人の場合には,新税率が適用されるのは,12年3月から13年の2月期ですので,それまで待たなければなりません。このため,ここで事業年度を7月に変更すれば,11年8月から12年7月期で新税率が適用できますので,所得の大きな法人では,納付税額が全体として減少することになります。
 

 編集後記
 7月12日は,源泉所得税の納期の特例を選択している場合の納付期限となっています。当事務所に納付書の作成をご依頼頂いた皆様で給与明細等をまだお知らせいただいていない方は,早めにお知らせください。
  編集発行 株式会社プランニングファイブ
 

    

Last Updated: 6/JUL/1999