P5 NEWS         SHONAN TAX OFFICE  NO.237   
 

   
 
平成21年6月1日
 
再販制度
 
 六月になるとそろそろ梅雨(つゆ)の季節。何故「梅雨」というのか、いろいろな説があるようです。梅雨はしとしと雨が降ることから「露」に通じるとか、食べ物が腐りやすい「潰(つい)ゆ」からとか、また梅の実が黄色く色づく時期の雨であるからとか、はっきりしたことは分かりませんが、この時期は、ジメジメして食べ物が腐りやすい季節です。
 

 気象庁は、毎年“梅雨入り”を発表します。最近では、何日頃に梅雨入りしたらしいと言う発表の仕方をしています。関東地方の平年の梅雨入りは、6月8日頃で梅雨明けは、7月20日頃です。昨年(2008年)は、梅雨入りが5月29日頃で、梅雨明けは7月19日頃でした。今年はどうなるのか?

 

 いたる所に中古の本を販売する本屋さんが増えて、そこで買うことが多くなっています。以前は、本は、定価で買うものとなどと思っていました。中古店以外では未だに定価で売られています。これは、再販制度(再販売価格維持制度)があり、出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる制度です。独占禁止法では、再販売価格の拘束を禁止していますが、一部のものについては、未だに認められていて(21条)、本は販売業者が出版社と「再販契約」を結ぶことで例外的に許されています。すなわち、「再販制度」とは、出版社が書店での販売価格を決め、それを守らせる制度なのです。

 

 ただし、書店にもメリットがあります。「委託販売」と同様に、売れ残りリスクを「返品」によって出版社に負担してもらうことができ、その代わりに自分のモノであるはずの商品の価格の決定権を出版社に委ねています。

 

 今、この制度がそのまま維持できるかの岐路に立っています。本などのリサイクルショップ「BOOK・OFF」の株主に出版業界大手の数社が躍り出ました。これだけ市場での地位を占めている中古市場を締め付ける目的とは思えませんし、出版大手が「自由価格本」の提供をする意図があるのでは?とも言われています(東洋経済09/6/6)。












 

6月の税務・総務予定


((税務)
*所得税予定納税の納税通知            15日まで
*個人住民税の納付(第1期分0)         条例で定める日
(総務他)
*給与計算 住民税額の変更
*労働保険の更新手続きは、   6月1日から7月10日まで
 

 

 本を書店で注文しますと1週間−2週間待たされるのは当たり前。ネット通販のAMAZON ですと、数日のうちに、早ければ翌日にも手に入ります。再販制度があるためかどうかは分かりませんが、少なくとも、出版業界の従来までの流通制度には問題があることだけは確かなようです。

 
 2009年の補正予算が、5月29日成立しました。先月お話しした減税などの「租税特別措置法の一部を改正する法律案」などの関連法案は、まだ審議中ですが、いずれ成立する見込になっています。
 

 この@住宅取得等のために贈与を受けた場合には、時限的に五百万円まで贈与税を課さない、A中小企業の交際費課税の軽減を行う、そしてB、研究開発税制の拡充を行うこの減税法案は、5月7日に衆議院の財務金融委員会に付託され、12日に採決をし、13日には本会議で可決成立しております(衆議院御会議録第31号)。

 

 こんな訳でほとんど内容はないのですが、衆議院の審議録(5/12第22号会議録)の概略をご紹介いたします。

 

 
(1)住宅資金贈与関係

 

質問者(鈴木委員)

 住宅取得のための時限的な贈与税の軽減措置についてお伺いします。今までの110万円を610万円に引き上げようということでございます。これによって、5百万引き上げることによって、どの程度の経済効果が生まれるというふうに試算をしているのか。・・

 
政府答弁(佐々木参考人)
 住宅取得等資金の贈与に対します今回の非課税措置を設けることにより、いわゆる頭金のような必要な手持ち資金の用意ができるということになりますので、新たに住宅を取得したり、あるいはリフォームを行ったりというようなことが考えられると思っています。・・住宅投資につきましては年間約2,800億円増加し、経済波及効果につきましては約5,400億円ということで考えております。
竹下副大臣
 5百万円とした根拠ということでございますが、一つは、住宅金融支援機構のフラット35の利用者のデータというものを見てみますと、取得の際の頭金として準備されているのが5百万未満の階層が圧倒的に多いということで、5百万円ということにすれば相当インセンティブ効果、水が流れやすいようにする効果があるのではないかと思っております。

 

 
(2)交際費関係

 

質問者

  中小企業の交際費のこの減額措置について、今回、資本金1億円以下の企業の交際費の定額控除限度額を4百万円から6百万円に引き上げることにしたわけですが、まずその理由をお聞かせいただきたい、あわせて根拠もお示しをいただきたい。

 

竹下副大臣

 中小企業が交際費の支出を拡大した場合の減税メリット、それを広げることによって、一つは、中小企業の活動がよりしやすくなる、そしてもう一つは、飲食業の皆さん方への波及、需要喚起ということをねらいとしたものです。
 現行の4百万円という定額控除限度額を6百万円まで引き上げるということにいたしておりますが、これは、資本金5千万円以上1億円未満の中小企業に係る一社当たりの平均交際費支出額は約470万円となっていますが、今回の引き上げ措置によりこうした企業にも交際費を一定限度拡大するインセンティブを与えることができること、また、現行の五割増しということでございますので、従来と比較しても大きな引き上げになると考えられること等を勘案いたしたものでございます。
 なお、交際費課税の軽減措置による減収額は約2百億円程度と見込んでおります。
 

政府答弁(横尾参考人)

 今回の措置におきましてどの程度交際費の支出が拡大するかでありますが、これは個別の企業の状況にもよりますので一概には言えませんけれども、一定の前提のもとに試算をしますと、今御答弁ございましたけれども、資本金5千万円以上1億円未満の中小企業の平均交際費支出額は約470万円でございます。言ってみれば、この400万円を超える70万円は全額自己負担になるわけですが、今回の軽減措置のもとで同じ自己負担でどれぐらいふえるかというのを試算しますと、約39万円、つまり509万円の交際費になるという試算をしてございます。一社当たり39万円ということでございますけれども、これを資本金5千万円以上1億円未満で利益を上げている法人の数約31,500社に掛けますと、マクロベースでは約123億円の交際費支出の増加になるという試算結果になります。

 
(3)研究開発関係
質問者(松本委員)

  そもそもなぜ現行の研究開発税制を見直す必要があるのか、その理由を説明してください。

 
政府答弁(加藤参考人)
 現行の試験研究費の特別税額控除制度は、当期の法人税額の20%を上限に税額控除ができる。天井がございます、当期の法人税額の20%。それで、これを超えた場合一年限りは繰り越すことができるのでございますが、現在の厳しい経済状況のもとで企業収益が大変減少しておりまして、納付される法人税額も低下しております。そうしますと、この法人税額の20%という天井が非常に低くなってきておりまして、控除できる金額が減少するという現象が生じております。
 したがいまして、こうした事態に対応するために、控除できる金額を確保する必要があるということで、景気回復を目指す21年、22年度中は時限的に控除の上限額を20%から30%まで引き上げる、それから、控除し切れなかった21年、22年度分につきましては24年度まで繰り越すことができるということで、いわゆる控除をできる金額の上限を上げることによって全体の研究開発税制のインセンティブ効果の減少を食いとめるというのが今回の改正理由です。
 
一部省略

 

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税の歴史−江戸時代・商人の税
 
 江戸幕府は、もともと、商人に税をかけるという発想は乏しかったようで、手当たり次第というか、思いつきというか、自然発生的に税を徴収し始めたようです(佐藤『江戸の税と通貨』72頁)。
 

商人に対する税を大雑把に分けると、“運上金”、“座役”に“冥加金”です。

 “運上金”というのは、取引をする特権を与える代わりに、見返りとしての税のことで、田沼意次(10代家治の時代に幕府を主導した)の時代には、隠し売(ばい)女(た)(不手適切な言葉ですがそのまま使用)、にも税を課したとのことです。田沼批判の落首に「世にあふは 道楽者におごりもの ころび芸者に 山師運上」があったそうです。道楽者や山師などろくでもないものの喩えに運上が出てきました。早い話、売上の何割かは、上納するという税です。
 

 “座役”は、朱座、鉄座や銅座などという商品統制のためのもので、幕府による直営の座で、幕府による専売体制が整備されましたが、所詮は、商人である関係者の利益養護という側面も持っていました(佐藤『租税』148頁)。

 

 “冥加金”は、仕事をさせていただきありがたい「冥加至極に存じます」という税です。決まった金額を納めるというものではなく、納める側が決めていたようです。田沼没後に定飛脚問屋の元締めが、江戸の商人2千人(株)を組織して毎年1万両の冥加金を納めたと言われています。その代わり商売の“独占”を認めてもらうというもので、袖の下のような感じでしょうか。今の政治献金もそんなに変わらないかも知れません。

 

 田沼時代の税制は、なかなか面白いもので、江戸幕府当初の以来の伝統的な「重農主義」から「重商主義」へと方向転換し、幕府財政を増税へシフトしていった時代だったのかも知れません。

 

 政府は、昨年のクリスマスイブに「中期プログラム」を閣議決定して、23年度からの大幅な増税を目指して動き出しました。まさに平成の「重税主義」のスタートです。

 
一部省略
 

編集後記


 
今月は、梅雨入りの話からさせてもらいました。入梅とは違います。入梅は暦の区切り(雑節)で、毎年6月11日か12日です。以前は大体合っていたのに、今は早めになっています。温暖化の影響でしょうか。まだ続いているインフルエンザに腐りやすい食べ物、注意しなければいけないことばかりです。   
 

        編集発行 株式会社プランニングファイブ