P5 NEWS      SHONAN TAX OFFICE NO.157
 




 

平成14年10月1日

所得の公示はいや裁判

 

 慢性的に、この“P5NEWS”の発行が遅れ気味になってしまいました。申し訳ありません。ところで、今月も何を書こうかと、未だ決めかねています。新聞記事から探そうかとか、最新の租税判例はないかとか、送られてきた過去のメールを引っ張り出したりして書き始めるまではイライラ・イライラ。とにかく書き始めることにします。  

 そういえばこんな記事がでていました。それは、税務職員の名をかたり、個人情報を入手する手口にしているとしたものです。

 具体的には、都税事務所職員や財務局職員、社会保険事務所職員など、公的な調査を装い、電話等で家族構成や勤務先、自宅の住所などの個人情報を聞き出すというもので、ここ数年急増しているとのことです。

 最近でも、にせ税務職員による同様の手口の事件が7〜8月の2ヵ月間で茨城県、新潟県の8件をはじめ関東甲信越地区で31件発生しているとのこと。その手口は、税務職員等をかたり税金の還付があると偽り、子供の勤務先・連絡先の電話番号や携帯の電話番号を聞き出すとのこと。犯人は男性・女性の場合もあるらしいです。

 この手口は、昔からよくありました。以前は、書籍を売りつけるなどして、金品をだまし取るものでしたが、最近の面白いところは、個人情報を入手するために、官公庁の名前をかたるというところです。それだけ個人情報が価値があるということなのでしょう。特にクレジットカード社会がわが国でも到来し、カード決済が多くなっています。カード番号と有効期限を知られ、カードが勝手に使われててしまったということもよく聞きます。

 ショッピングばかりではなく、電子申告、電子納付時代もまもなくやってきます。自分の情報のガードは大丈夫でしょうか。


10月の税務・総務予定
(税務)
*個人事業税・個人住民税の納付  条例で定める日

(総務他)
*健康診断の実施
*秋の運動会・ハイキングの実施

 

 次に裁判例から・・・

   毎年5月に公示される「長者番付」に名前が載るのを避けるため、当初は所得の一部のみを申告し、申告期限後に正規の所得について修正申告した納税者の控訴審判決が9月27日に広島高裁でありました。「長者番付」については、このニュースでも何度も取り上げていますし、公示制度に対する疑問も挙げています。

 この判決では、納税者は早い段階で納税の意思を持っており、自発的な納税であったとして、当初過少申告をしたペナルティー(過少申告加算税)を課した税務署の課税処分を取り消した一審判決を支持したものです。今月はこれを取り上げましょう。

 A,Bさんら4名は、共有であった土地を自動車学校に12億円で売却しました。Aさんは、この譲渡により所得が高額となってしまったため、高額納税者の公示により名前が公表されてしまうことを危惧しました。公示されれば経営する自動車学校の労働組合に知れるところとなり、今後の労使交渉に悪影響を与えかねないと思ったからです。

 そこで、公示されない方法について顧問税理士に相談したところ、それを避けるために当初申告を少なくし、後で修正申告をする方法をとるのがよい旨の教示を受けました。

 そこで、まずこの土地の売却に係る長期譲渡所得を記載しない確定申告書を、期限内の3月13日(3月15日が期限)に出しました。そして、土地の売却も含めた修正申告を、資料収集手続が終了する4月20日頃に出そうと準備をしていました。

 ところが、共有者の一人のBさんは、3月15日の確定申告期限以降であれば、高額納税者の公示の対象とならないものと誤信し、3月25日に修正申告書を提出してしまいました。ところが、公示の対象となるのは、3月31日までになされた申告でしたので、Bさんは、県内第1位の納税者として後日公示されてしまいました。

 そこで他の共有者であるAさんらの申告について、所轄税務署から問い合わせを受けることになり、結局4月24日に修正申告書を提出しました。

 税務署は、その申告書の提出は、税務調査があったことにより所得税額の増額がある(更正)であろうことを予知してされたもの、すなわち、調査があって納税額が少ないことが明らかになって、仕方が無く申告したのと同じだとしてAさんらに、通常の正しい納税額の他に過少申告加算税として1千万円を払いなさいという処分をしました。

 この争点は、調査があり、その事実が明らかになったために、修正申告を出したのかどうかと言うことにあります。

 裁判所の理由付けは、長文で、ここで全文を掲載することはできませんが、次に簡単に整理します。

*更正可能性の予測の有無の判断は、修正申告者が、過少申告の状態にあることを認識していたか否か、課税庁の調査の段階ないし程度についてどのような認識をしていたか、などの事情を総合的に勘案する。

*過少申告であることを認識していた者については、調査があったということさえ認識すれば、その調査の段階ないし程度についての認識がどのようなものであったとしても、通常は、将来の更正の可能性を予測したものといえる。

*過少申告であることを過誤等により認識していなかった者については、その者が認識した調査の段階ないし程度の内容により、将来の更正の可能性を予測したか否かが問われる。

*例えば、調査とは無関係に修正申告を提出する意思を確定的に有していてそれに基づいて申告書を提出した場合や、調査とは無関係に修正申告をせざるを得ない客観的状況下において修正申告を提出した場合等、調査がなくても修正申告がなされたであろうということが推認できる場合には、更正を予知したとは言えない。

*申告納税方式による課税においては、納税者が正確な納税額を自発的に申告することを基本としており、たとえ確定申告日を経過して事後的になったとしても、なおも納税者による正確な納税額の自発的申告を奨励することにある。

*Aさんらは、高額納税者の公示を回避するために、当初から、修正申告をする意図(動機)を持った上で、長期譲渡所得を記載しないまま確定申告をしたが、調査がなされなくても、いずれは修正申告をしたであろうことが推認できる。

 この事件は、結果としては妥当な判断だろうと思いますが、調査と修正申告書の提出について、つっこんだ解釈をしています。

 途中省略

 

【連載:外国人の法務Q&A】

  今月は休みます。

  SHONAN TAX OFFICE

     税理士 中江 博行

     税理士 大野千寿子

     スタッフ一同



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(株)P5では、経営計画策定、保険・不動産等の

資産運用、相続対策業務を行っております。

会議費と交際費

 「コピー用紙を購入したんですが、これは事務用品費?それとも消耗品?」という質問を受けました。これははっきり言って、どちらでも大差ありません。でも「お客様と打合せをした時の飲食代は、交際費ですか?会議費ですか?」この質問の場合はちょっと違ってきます。

 ご承知のとおり法人の場合、交際費には損金不算入とされる金額がありますので、交際費になるのか、会議費になるのかの判断は重要になります。

 会議に関連して茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用は接待交際費から除かれる費用として措置法に規定されていますが、この「通常要する費用」については、「会議に際して社内又は通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等の接待に要する費用」であり、この会議には来客との商談・打ち合わせ等が含まれるとされています(措通61の4(1)-21)。

 しかし具体的な基準は明らかにされていないため、実務では交際費との区分に、頭を悩ますところです。

「通常供与される昼食の程度を超えない飲食物」といわれても分かりにくいですが、一応の目安として、3,000円程度のランチ(会議が長引いて夕食になったとしてもランチ程度のものであればよい)で、食前酒程度のアルコールであれば、会議費として差し支えないとされています。

 しかし、あくまでも実質で判断されますから、会議に関連するものでなければいけません。そこで、その会議の開始時間と終了時間、場所、内容、参加者等をきちんと記録しておくことが、接待費との区分上、重要なことになるでしょう。 

1、今月のパソコン教室は、

 省略


 編集後記   金木犀の香りにどことなく秋の気配を感じます。税務の現場ではそろそろ年末調整の準備が始まります。保険料の控除証明書等もまもなく送られて来ます。大事なものですから紛失しないようご注意下さい。
  編集発行 株式会社プランニングファイブ